40代、50代からのバス、タクシーへの転職のススメ

45歳から52歳にかけて、ブラック会社での営業社員、タクシー運転手への転職を経て、路線バス運転手への転職を果たした私の実体験と、路線バス運転手、タクシー運転手の日々の仕事をご紹介しています。 ブログ(最新記事更新中)も見てね。

タクシー運転手への転職実体験記

タクシー運転手という選択との葛藤

結局、48歳で再び無職となった私は、正直途方に暮れていました。

3年前の就職活動の苦い経験は、私を限りなく絶望的な思いにさせていました。
しかも、前回より、年齢的にも経歴的にも、明らかに条件が悪くなっています。

まともに就職活動をしても、転職先は無い。
もしあったとしても、それはかなりの確率で、いやほぼ100%ブラックだ。

それは経験に基づく、確信に近いものでした。

どうしようか…?
思案する私の頭の片隅には、実は、以前からある考えがあるにはありました。

それは、漠然としたものではあったのですが、どこか、自分の人生で最後の手段だといったイメージに包まれたものでした。

これしかないか…。
その考えとは、タクシー運転手になるという事でした。
少し大袈裟ではありますが、本当に最後の手段として、頭の隅に封印しておいたもののような感じでした。

その頃までは、正直言って、その仕事に対して偏見のようなものを持っていました。

また、曲がりなりにも形の上ではホワイトカラーを続けてきた自分がブルーカラーになるという事に、抵抗もあったような気がします

でもやっぱり、もうこれしかないかな。
まさに背に腹は代えられないとはこういう事かと思いました。

よし、タクシーに乗るか! いやーやっぱり…。
こんな感じで、数日間悩みました。

そして結局、これしかないんだという結論に達しました。

家内にも打ち明けましたが、やはり、あまり賛成という感じではなかったですね。
でも家内に現状を説明しているうちに、自分の頭の中でも、そうするしかないという決意ができたような気がします。

そうと決めてからは、どこのタクシー会社にするかを検討しました。

そもそも、タクシー運転手になるには二種免許というのが必要なのですが、どこの募集要項を見ても、入社後に取得可となっていました。

どこの募集要項を見ても…、そうです。募集しているタクシー会社は、いくらでもあったのです。
これはすなわち、離職率の高さの裏返しだなと思いながら、その仕事の過酷さを想像していました。

絶対大変なんだろうな。でももうやるしかない。
何度も自分に言い聞かせながら、地元では一番顧客評価が高いと言われているタクシー会社に面接を申し込み、即決で採用となりました


普通二種免許取得

タクシー会社に入ってまず最初にしたことは、普通二種免許を取得することでした。

普通二種免許試験には、学科試験と技能試験及び適性試験があります
受験資格は、21歳以上で、普通免許等を既に取得していてその取得していた期間が3年以上であることです。

因みに、この会社に関しては、二種免許無しに、すなわち未経験で入社してくる者が9割以上だったと思います。

前記三試験のうち、技能試験が一番厄介なのですが(個人的な意見として)、技能試験は、指定自動車教習所を卒業したものは免除となります。
タクシー会社によっては、この指定自動車教習所へ通わせて技能試験を免除させる方法をとっているのですが(おそらく殆どの会社がそうだと思います)、私が入った会社は、運転免許センター内の試験場で直接技能試験を受験させるスタイルでした。

この運転免許センターで直接技能試験を受けることを、いわゆる一発試験というのですが、非常に審査が厳しく難関です。
一般人が何も準備をしないで受験したら、おそらく10回受けても合格しないと思います。

私が入った会社では、二種免許取得のための専属指導員がおり、新入社員が入社するたびに、免許取得までの指導を行っていました。

技能試験対策としては、実際に試験が行われる実地コースで、指導員とマンツーマンで車を走らせて練習しました。
安全確認の方法とタイミング、右左折の仕方、速度の調整、停車の仕方と精度など、様々な合格必要ポイントを押さえながらシミュレーションしていきます。
本番の技能試験のためのコースは4コースあり、直前までどのコースになるかわからないため、すべてのコースでの押さえるべきポイントを頭に入れていきました。

この指導を受けたものでも、合格までに平均2~3回の試験を受けていました。
私は、なんとラッキーなことに一発合格でした。試験費用は自腹で、1回8,000円程度かかりましたから。
しかも会社から、学科と技能両方の一発合格者にということで、褒賞金までいただきました。

学科試験対策としては、過去問を繰り返せば十分です。

適性試験は特に問題とはならないのですが、二種免許特有の深視力検査というのがあるので、注意が必要です。
深視力とは、両眼視機能と呼ばれる眼の遠近感や立体感を感じる能力のことです。
検査では、窓を覗くと3本の縦線があって、真ん中の1本が、奥から手前へ、手前から奥へと繰り返し動きます。そして、両外側の2本と真ん中の1本の3本が横一列に揃ったと思う所でボタンを押します。

でも、なんだかんだ言っても、この普通二種免許が取れずにタクシー運転手を断念する人は殆どいないと思いますので、その点はまず心配無いと思います。
普通二種免許取得のために要した期間は約一カ月で、その間は、月20万の給与が保証されていました。


地理について

ところで、タクシー運転手となるにあたっての不安要因として、地理の問題があると思います。
私が入った会社では、車両にナビが装備されておらず、地理の勉強が必要でした。

私は、前職で不動産関係の仕事や飛び込み営業の仕事をしていたので、地理にはかなり自信があったのですが、それでも詳細な場所がわからなかったり、不得意なエリアがあったり、細かな施設の場所がわからなかったりと、結構苦労しました。
それと、ある場所に行くならこのルートを通るのが業界の常識だといった、タクシーならではの、決まったルートがあったりするんですよね。

でも今は、私の住む地方都市でも、ほぼすべてのタクシー会社がナビを装備していると言ってもいいくらいで、私がいた会社も、数年前に全社ナビ仕様にしたようです。
地理に詳しいに越したことはないでしょうけど、それほど心配する事ではなくなっているようですね。


タクシー運転手の実務

さて、ようやくタクシー運転手としての実務の開始です。

最初は、側乗による実地乗務からでした。
助手席に指導者・経験者を乗せて、通常のタクシー営業をするのです。

この光景は、街中でご覧になった方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
行き先とか、乗車時の機器操作とかがよくわからない時は、隣から教えてくれます。
ただ、でかい男が前にふたり座っていたら、お客さんはちょっと引きますよね。
実際、手を挙げかけて止める方もいらっしゃいましたよ。

5~6回の側乗乗務が終わると、いよいよ単独での乗務です。
初めのうちは、日勤といって、朝始めてその日の夕方には終了する勤務形態で乗務します。

いざスタートという時は、さすがに緊張しました。
車という密室に変な人が乗って来ないかなとか、わからない行き先だったらどうしようかとか、いろいろ考えてしまいましたね。
最初のお客さんは老夫婦で、知っている行き先を言われホッとしたのを今でも憶えています。

単独での日勤に慣れたら、今度は夜間・深夜の側乗乗務を行います。
深夜の繁華街は特別なんです。ちょっと覚悟が要ります。

深夜は酔客が中心となりますから、客層が日中とは全く異なり、接客も、日中とは違う面でいろいろ気を遣う事があるんです。
トラブルも、この時間帯が突出して多くなります。

私も在職中に、酔客にいわれなき因縁をつけられ、どうにもならなくなって交番に行ったのが1回、車内で熟睡され、起こすために交番に行ったり、お巡りさんを呼んだりしたのが5回あります。
車内で眠ったお客さんは、ひとりでは体に触って起こさないように指導されるんです。
余計な疑いを持たれる可能性がありますから。

大声で呼びかけて、寒い日は窓を全開にして、いろいろやってそれでも起きなかったらお巡りさんを呼びます。
お巡りさんもよく承知してくれていて、手際よくガッツリと起こしてくれます。
目が覚めて、大騒ぎする大虎でも、お巡りさんが大勢いれば安心です。

その他、小さなトラブルは数え切れません。
これが嫌な人は、深夜に乗らず日勤だけしますが、営業収入は上がりません。
やはり、長距離が頻繁にあるのは深夜ですから。

夜間・深夜の側乗を済ませると、やっと本来の勤務形態である、単独での隔日勤務となります。
隔日勤務とは、1日出て1日休んでを繰り返す勤務です。
具体的には、某月1日の午前7時に乗務を開始し、1日の昼・夕方・深夜を経て、2日の早朝午前4時に乗務を終了します。
そしてまた3日の午前7時に乗務を開始し、4日の午前4時に乗務を終了します。
これを繰り返します。

営業時間は、1回につき21時間を超えてはいけません。
ひと月の最大営業時間も規定されています。

これを見ると、こんなに働かされるのかと思われるかもしれませんが、現場ではちょっと違っていて、収入のために、できればもっと働きたいという人が結構いるのです。
以前は規制が緩く、長時間働いて沢山稼ぐことができたようですが、今は当局のチェックが厳しく、営業時間超過は会社が許してくれません。
私は怠け者ですので、いつも許容時間を残して終了していました。

実際に隔日勤務を経験してみると、思っていたほど過酷ではなく、慣れてくると体もそれほどきつくはありませんでした。
休憩も自分のペースで取れますし、少し早めに切り上げようと思えば可能です。
ただ、勤務姿勢というか、手を抜けばそれがすぐ収入額に反映されるのが、プレッシャーではありましたね。

むしろ苦痛だったのが、乗車業務終了後の車両清掃です。
自分の車も洗わないタイプですから。
いわばサービス残業の状態でしたし、面倒くさかったですね。


タクシー運転手の収入について

次に、収入についてお話ししましょう。

一応基本給もありますが、少ないので実質歩合制だと思ってください。
月によってバラツキはありますが、私の場合は、営業収入額(タクシー営業での売り上げ)が月45万~53万で、これを基にした給与支給額(額面)が月17万~21万でした。
手取りにすると、14万~17万程度ですね。

これで、営業成績は、社内でちょうど中位程度です。
地方都市からすれば、こんなもんなんでしょうか?

注目していただきたいのは、営業収入額に対する給与支給額の比率です。
実は、これは各タクシー会社によって異なるのです。
この会社は概ね40%弱ですが、同じ地方都市の別会社では50%のところもあります。
この会社は、最低レベルでした。

言うまでも無く、この差は非常に大きいです。
でも、実際会社に入ってからではないとなかなかわからない事柄なので、横の情報を基に比率のいい会社に転職していく者もたくさんいました。

もし情報が入手できれば、会社の総売り上げ云々よりも、会社と社員との売り上げ金の分配比率を比較されればと思います。


会社を辞める

私は、このタクシー会社に約4年勤務した後、バス会社に転職したのですが、そのきっかけとなったのが会社内におけるバス課への異動でした。

収入面の安定と車両清掃の軽減を考慮して希望したのですが、自費で大型二種免許を取得しなければなりませんでした。
最短で取得するため、特例で有休をからめながら、合宿して受講できる教習所に約10日間泊まり込んで卒業しました。
費用はざっと30万程度かかりましたが、これで技能試験は免除となり、普通二種免許を持っているため学科試験も免除でした。

こうしてバス課に異動したのですが、ここの責任者が最悪で、古い人間ばかり優先し、私は殆どバスには乗れず、なんとタクシーの日勤を続ける羽目になったのです。
収入はガタ減りでした。

文句を言えば言えたんでしょうけど、あっさり辞めました。
タクシー運転手に転職を決めた時点から、何かもう怖いもんがなくなったというか、もっと条件のいい会社でまたタクシーに乗ればいいやっていう感じでしたね。

でも、年齢的に、路線バスの運転手になれるとは思っていませんでした。


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